ふたば訪問看護ステーション|株式会社タモト 沖縄県南風原町 那覇市

その人らしく在宅で看取ること

2019.06.20

沖縄県看護協会の広報誌「ともしび」から、執筆のご依頼があり掲載されました。

テーマ:その人らしく在宅で看取ること ~ 訪問看護師としての関わり~
看護師 田本 あゆみ

 私は、臨床で退院支援、外来通院患者様の在宅での療養支援に携わる中、患者様は「自宅でどのように過ごし、病気とつき合っているのだろうか」「どのような支援が必要だろうか」等、在宅看護に興味があり、訪問看護に携わるようになりました。実際に訪問看護を通して感じたことは、在宅医療の重要性が叫ばれ、在宅医療へのニーズも多様化している中、在宅医療ケアチームとしての訪問診療や訪問看護の資源不足でした。

 そこで、「家に帰りたい」と思う患者様のニーズに寄り添い安心して家で暮らせるよう、病態等を専門的に予測、判断、出来る看護を提供したいと思い訪問看護ステーションを開設しました。

 今回、「在宅での看取り」について執筆の機会を得ましたので、自事業所での対応についてご紹介いたします。

 病院の退院支援看護師等から、「家で看取りを希望している方がいます。訪問看護受け入れ出来ますか?」等と電話相談があり、受け入れます。まず当事業所では、ご本人、家族とお会いし、在宅での看取りについての意思決定がなされているか確認する事から始めます。何故なら、意思決定がされないまま、退院すると利用者様が望む最期の時間を過ごすことが難しいことがあるからです。訪問看護で終末期を支えるために、大事にしてる2本柱があります。

 一つ目は、「本人が家へ帰りたい」等の意志決定がなされているかです。「自分の生き方を自分で決める」ことが大切で、そのご本人が決定した内容に家族が同意しているかも重要だと思います。在宅での看取りは、生活の場で、最期まで病気と折り合いをつけながら、どの様に過ごしたいのか、何度も共に考えながら、支援していく過程が重要だと思います。訪問看護師は生活の場で、利用者を「患者」というだけでなく、家族としての役割(父・母など)等を含め、個人の尊厳を守ることを大切にしながら看護を提供出来る様に心がけています。また、私達、在宅医療ケアチームも、本人の意思は変化しうることも踏まえ、本人自らが意思を伝えられる雰囲気作りを大切にし、悩んだ時、チーム一員として共に考え、寄り添える看護ができるようにしています。

 二つ目は、家族の力です。「どのような最期を迎えたいか」については、出来るだけ、早い時期から本人・家族で話しあう事が大切だと説明をしています。看取ることに主眼を置くのではなく、住み慣れた家で「生きること」「逝きぬくこと」を一緒にサポートしていきましょうと説明します。人が死を迎えるのを身近で経験することは少なく、ご本人も家族も、亡くなる人がどのような経過をたどるのか、どうなるのか、それに対しどう対応したらよいのか、多くの家族は戸惑います。亡くなるまでの経過を知らないため、家族は容態が変化すると「死なせたらいけない、何とかしなくちゃ」と思って慌ててしまい救急車を呼ぶ方もいます。利用者の容態変化に不安にならないよう、日頃から看取りのパンフレット等を用い、時間経過における容態変化や亡くなること、それが正常なプロセスである事について説明し、変化した場面に対応できるようにしています。

 例えば、死が近くなると、血圧が下がって手足が冷たくなり、反応が鈍くなったりする時間が長くなったり、呼吸と呼吸の間が長くなったりします。訪問看護師はこのような変化がある事を繰り返し話し、死が間近であることを伝えます。今、起こっているのが自然な反応であるのだとわかれば、家族も死を受け入れる準備ができるようになると思います。旅たち(死)を後まわしにすることなく、その都度向き合い後悔が残らないよう家族をサポートするのも、在宅医療チームの役割と考えています。また、訪問看護師は、家族に介護のコツ等もアドバイスします。段々、動けなくなる本人を目の前にし、出来ることを家族は模索します。その時、側に寄り添い、唇が渇けば水でうるおし、背中が痛い時は背中に手を入れさすって下さいと、そっと語りかけます。一人にしないで、側にいて手を握ったり、好きな音楽を流したり、本人が楽に過ごせるようにして下さいと伝えます。

 これまでの在宅での看取りとなったケースは、家族支援を含め、「親戚や友達も大勢きて周りを気にする事なく過ごす事ができた」「いつも通りの日常がおくれた」「大好きな湯ぶねに入れてよかった」「長い間生きてきたが、この病気を患うことで、君らと出会えてよかった」「在宅看取りで良かった。」との声をいただきました。

 在宅看護を実践する中で、日々、家族に見守られ、家族の笑い声、食事の香りなどを感じながら過ごし、ご本人の望む在宅での看取りが遂げられることで、たくさんの心の財産を残し語りつがれていくのだと、日々看護を通じ感じます。

 これからも、在宅医療チームの一員として、訪問看護で日々研鑽していきたいと考えます。

 
      初ひ孫さんと対面         退院直後、医師からご家族へ説明

 
                 孫に見守られて


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